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ハンドメイドの値段の決め方|販路の手数料と時給から逆算する

「この作品、いくらで売ればいいんだろう」

ハンドメイドを売り始めて最初にぶつかるのがここだと思います。相場を見て何となく決める。原価の3倍にしてみる。でも本当にそれで利益が出ているのか、確信が持てない。

この記事では、値段を「手取り」から逆算する方法を書きます。

読むと分かること。

手数料は各社の公式ページを2026年8月に確認したものです。手数料は改定されます。実際に使うときは必ず公式ページでご確認ください。

結論:値段は相場で決めて、手取りで検算する

先に結論を書きます。値段は「原価から積み上げて決める」のではなく、相場を見て決めたうえで、手取りが成立するかを検算するのが安全です。

理由は単純で、買う人は作り手の原価を知らないし、興味もないからです。原価500円の作品が3,000円で売れることもあれば、原価2,000円の作品が1,500円でしか売れないこともあります。値段を決めるのは市場であって、原価ではありません。

では原価は何に使うのか。「その値段で売って大丈夫か」を確かめるために使います。順番が逆なだけで、原価の計算は必要です。

具体的にはこの2段構えになります。

段階やること
① 値段を決める似た作品の相場を見る。売り切れた実績の価格を見る
② 検算するその値段から手数料・送料・材料費・時間を引いて、手元に残る額と時給を出す

②で「時給300円」と出たら、値段が安すぎるか、作り方に時間をかけすぎているかのどちらかです。

「原価の3倍」がうまくいかない理由

原価の3倍という目安は、原価の定義が人によって違うので当てになりません。

たとえばレジンのピアスを作るとき、何を原価に入れるでしょうか。

真面目に数えるほど原価は上がり、雑に数えるほど下がります。同じ作品でも、数え方次第で原価は2倍くらい変わります。その3倍と言われても、根拠になりません。

さらに大きな問題があります。原価の3倍という考え方には、手数料と送料と自分の時間が入っていません。ここを入れないと、黒字に見えて手元に残っていないという状態になります。

販路によって手数料の「計算式」が違う

ここが本題です。販売手数料は料率が違うだけではありません。何に対して手数料がかかるかが、販路ごとに違います。

各社の公式ページを確認して整理したのがこの表です(2026年8月時点)。

販路料率1件ごとの固定額手数料がかかる範囲
minne10.659%(税込)作品価格+オプション+送料
Creema10.67%(税込)決済総額(送料を含む
BOOTH(自宅から発送)5.6%+45円商品価格+送料
BOOTH(ダウンロード)5.6%+45円商品価格のみ
BASE(スタンダード)6.6%+40円決済総額
STORES(フリー)5.5%決済総額
STORES(スタンダード)3.6%決済総額(別途 月額3,300円)
メルカリ10%販売価格(送料込みの価格を付ける前提)
Yahoo!フリマ5%同上
note(クレカ決済)実質14.5%決済手数料5%を引いた残りに10%

※BASEのスタンダードプランは決済手数料3.6%+40円とサービス利用料3%の合計です。

見るべき点は3つあります。

① 送料にも手数料がかかる販路がある

minne・Creema・BASE・STORES・BOOTHの自宅発送は、送料も手数料の対象です。

買い手から送料を600円もらっても、その600円に対しても手数料が引かれます。1回あたり数十円ですが、月に30個売れば数千円の差になります。

Creemaは2025年11月にこの方式へ変わりました。それ以前は作品価格とオプションだけが対象で、送料は含まれていませんでした。以前の感覚のまま計算していると、実際より手取りを多く見積もることになります。

② 1件ごとに固定額がつく販路がある

BOOTHは1件あたり45円、BASEは40円が、料率とは別にかかります。

これは低単価の商品ほど効きます。BOOTHのダウンロード商品で計算すると、こうなります。

販売価格手数料実質の手数料率
500円73円14.6%
1,000円101円10.1%
1,500円129円8.6%
2,500円185円7.4%

同じ5.6%+45円なのに、500円の商品では実質14.6%、2,500円の商品では7.4%です。「うちは5.6%だから安い」と思っていると、低単価では見込みが外れます。

③ noteは単純な足し算ではない

noteの手数料は、決済手数料を引いた「残り」に対してプラットフォーム利用料がかかります。

クレジットカード決済なら、まず決済手数料5%が引かれ、その残りに対して10%です。1,000円の記事なら、1,000円 → 950円 → 855円。合計すると14.5%であって、5%+10%=15%ではありません。

差はわずかですが、「率を足せばいい」という前提が崩れることは知っておいたほうがいいです。

同じ条件で全販路を計算するとこうなる

条件をそろえて計算すると、手元に残る額は販路によってはっきり差が出ます。

次の条件で計算しました。

販路1点の手数料10点売ったときの手残り
STORES(スタンダード)76円14,544円
Yahoo!フリマ105円14,250円
STORES(フリー)116円14,145円
BOOTH(自宅発送)163円13,674円
BASE179円13,514円
メルカリ210円13,200円
minne224円13,062円
Creema224円13,059円

10個でも1,400円以上の差が出ます。

比べるときのコツがあります。「買い手が払う総額」をそろえることです。販路によって送料込みの価格を付ける方式と、送料を別に設定する方式があるので、作品価格だけをそろえても同じ条件になりません。

ただし、この表だけで販路を決めてはいけません

上の表で1位のSTORESスタンダードには、月額3,300円がかかります。この条件だと1点あたり148円の差なので、月に23点以上売らないと月額の元が取れません(3,300 ÷ 148 = 22.3)。

もっと大事なのは、手数料の安さと売れやすさは別ということです。minneとCreemaは手数料が高いほうですが、ハンドメイドを探しに来る人が集まっています。手数料が安いというだけで人のいない場所に移れば、そもそも売れません。

手数料は「同じだけ売れたら」の比較です。判断材料の1つとして使ってください。

時給に直して検算する

ここが一番見落とされます。材料費を引いて黒字でも、かけた時間で割ると時給が数百円ということがあります。

計算はシンプルです。

実効時給 = 手残り ÷ かけた総時間

先ほどの条件(minne・10個で手残り13,062円)で、1個作るのに30分かかるとします。

これなら十分です。では、作るのに3時間かかる刺繍のブローチはどうでしょうか。

ピアス刺繍のブローチ
販売価格1,800円1,500円
材料費250円400円
1個の制作時間30分3時間
10個の手残り13,062円8,881円
利益率62.2%49.3%
実効時給2,612円296円

利益率は49.3%で悪くないのに、時給は296円です。

利益率だけを見ていると、この作品は「ちゃんと利益が出ている」ように見えます。時給に直して初めて、割に合っていないことが分かります。

逆算すると、いくらで売るべきか出る

時給から必要な販売価格を逆算することもできます。

刺繍のブローチで時給1,000円を確保したい場合、必要な手残りは 1,000円 × 30時間 = 30,000円。ここから手数料と送料を戻して逆算すると、1点あたり約3,900円で売る必要があります。

いまの1,500円の2倍以上です。この差が「時給296円」の正体になります。

3,900円で売れないなら、選択肢は3つです。

  1. 作り方を見直して制作時間を減らす
  2. その作品はやめて、時給の高い作品に絞る
  3. 時給が低いことを承知のうえで、好きだから作る

3番目も立派な判断です。趣味として作っているなら時給は関係ありません。問題は、知らずに選んでいることです。

手取りから逆算する手順

ここまでを手順にまとめます。

① 相場を調べる

似た作品を検索して、売り切れた実績の価格を見ます。出品中の価格ではありません。出品中の価格は「売れていない価格」かもしれないからです。

② 買い手が払う総額を決める

作品価格と送料を分けて考えます。送料を安く設定すると総額は下がりますが、差額は自分で被ることになります。実際にかかる送料を測ってから決めてください。想定より重いことがよくあります。

③ 手数料を引く

上の表を参考に、販路の方式で計算します。送料が手数料の対象かどうかを間違えないようにしてください。

④ 送料・梱包資材費・材料費を引く

梱包資材は忘れがちです。袋・台紙・緩衝材・サンキューカードを足すと、1点20〜50円くらいにはなります。

⑤ 時間で割る

手残りを総作業時間で割ります。制作だけでなく、出品・梱包・発送の時間も入れてください。ここを忘れると時給が実際より高く出ます。

⑥ 判断する

時給が納得できる水準か。できないなら、値上げか、作り方の見直しか、その作品をやめるか。

見落としやすい費用

計算に入れ忘れやすいものを挙げておきます。

費用補足
振込手数料minne 220円/Creema 200〜275円/note 270円/STORES 275円 など。1回の振込ごとにかかります。少額で何度も振り込むと目減りします
月額費用STORESスタンダード 3,300円など。月に何点売れば元が取れるかを先に計算してください
失敗して捨てた分10個作って1個失敗するなら、材料費は約1.1倍で計算するのが実態に近くなります
消耗品接着剤・ヤスリ・アルコール・ラベル・インク。1回あたりは小さくても積もります
道具・型の代金一度きりの出費なので、「何個売って回収するか」を決めて割り戻します
梱包資材上記のとおり。専用の箱が要る発送方法は、その資材代も送料に含めた実額で

消費税については、免税か課税か、インボイス登録の有無で扱いが変わります。この記事では扱いません。判断は税務署か税理士にご確認ください。

副業として続けるなら、所得が年20万円を超えると確定申告が必要になる場合があります(給与所得者の場合)。細かい条件は税務署でご確認ください。

値上げに踏み切るかどうか

値上げをためらう理由の多くは「効果が分からないから」だと思います。

判断材料として、いま扱っている全商品を一律で値上げしたらいくら増えるかを出してみると、決めやすくなります。

たとえば手残りの合計が月23,000円だとして、こうなります。

値上げ幅増える手残り
+5%約2,000円
+10%約4,000円
+20%約8,000円
+100円(一律)約2,700円

これは売れる数が変わらない前提の計算です。実際は値上げすれば数は減ります。ただ、「10%上げて売れる数が1割減っても、手残りはほぼ変わらない」といった判断ができるようになります。

一律で上げるのが不安なら、時給が一番低い作品から上げるのが順当です。そこは値上げしても失うものが少ないからです。

この計算をするツールを作りました

ここまでの計算を毎回電卓でやるのは面倒です。特に販路くらべは、送料の扱いが販路ごとに違うので手計算ではまず合いません。

そこで、条件を入れると全販路で計算し直して並べる[値付けそろばん]というツールを作りました。

値付けそろばんの販路くらべ。同じ条件で全販路の手残りを計算して順位を付けている(画像はデモデータ)

Windows・Mac 両対応。スマホに送っておけば、作業台の横でも使えます。手数料は改定されるので、画面上で書き換えられるようにしてあります。

値付けそろばん(BOOTH・¥2,980)

売った後の集計には、別のツールも作っています。

出品前に確かめること

最後に、値段を決めたあと出品する前のチェックです。

このうち1つでも「まだ」があるなら、値段を決めるのは少し待ったほうがいいと思います。一度付けた値段を後から上げるのは、下げるよりずっと難しいからです。


在宅で何か始めたい方には、こちらもどうぞ。

書いている人のことはプロフィールにまとめています。


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