2025年の年末、ガソリンの暫定税率(1リットルあたり25.1円)が51年ぶりに廃止されました。長年「いつか無くなる」と言われ続けた税がついに消えた、大きなニュースです。
なのに——給油のたびに「安くなったなあ」と実感している人は、どれだけいるでしょうか。私はあまり感じません。レギュラーは全国平均で1リットル170円前後のままです。25円も下がったはずなのに、なぜ財布の手応えがないのか。
答えは1つではありません。①そもそも一気には下げない設計だった ②中東情勢で原油が上がって相殺された ③今は補助金が急速に縮んでいる——この3つが重なっています。そして②は、先日書いた食品の値上げの記事とまったく同じ根っこ。ガソリンも食品も、たどると〈中東→原油高〉の一本の線でつながっています。
この記事では、
- 暫定税率の廃止で、本当は何が変わったのか
- なぜ「安くなった実感」がないのか(3つの理由)
- 補助金はこれからどうなるのか(縮小と出口の話)
- 家計として、今できること
を整理します。
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そもそも「暫定税率の廃止」とは何だったのか
ガソリンの値段には、もともと揮発油税という税金が含まれています。そのうち「暫定税率(当分の間税率)」と呼ばれる上乗せ分が、1リットルあたり25.1円。1974年に「当分の間」として始まり、約51年も続いてきました。
これが2025年12月31日に廃止されました。あわせて、軽油にかかる暫定税率(1リットル17.1円)も2026年4月1日に廃止されています。
単純に考えれば、ガソリンは25円、軽油は17円安くなるはず。家計にとっては大きな話です。——のはずでした。
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なぜ「安くなった実感」がないのか
実感がない理由は、3つあります。
理由①:そもそも「一気には下げない」設計だった
意外と知られていませんが、廃止の当日に25円ストンと下がる仕組みではありませんでした。
政府は廃止のかなり前、2025年11月中旬から補助金を少しずつ増やして、価格を段階的に下げていくやり方をとりました。理由は「急に大きく下げると現場が混乱するから」。一気に安くなると分かれば、それまでみんな給油を控えます。そして値下げの瞬間にどっと殺到する。給油渋滞やスタンドの在庫切れが起きれば、かえって困る人が出ます。
だから「2週間ごとに少しずつ」という、ゆるやかな下げ方を選んだわけです。設計としては、2025年末〜2026年初にかけて「暫定税率の廃止と同じ水準」までたどり着く予定でした。
理由②:中東情勢で原油が上がり、値下げ分が相殺された
ところが、その途中で横やりが入りました。2026年に入ってからの中東情勢の悪化です。
イランをめぐる緊張で原油価格が急騰し、せっかくの値下げ分が、原油高でほぼ打ち消されてしまった。下げているそばから仕入れ値が上がるので、店頭価格が思ったほど下がらない。これが「実感がない」の最大の理由です。
ここが、食品の値上げとまったく同じ構図です。スーパーのパンもガソリンも、もとをたどれば中東→原油という同じ一本の線。片方は「包む側(包装フィルム)」を、もう片方は「燃料そのもの」を押し上げています。
食品側の同じ話はなぜ2026年の食品はこんなに値上げが続くのかで書きました。あわせて読むと「今年の物価高の正体」が一本でつながります。
理由③:今は補助金が急速に縮んでいる
原油高で店頭が上がりそうになったため、政府は2026年3月19日から緊急の補助金を再開しました。仕組みはこうです。
- 全国平均が1リットル170円を超えた分を、政府が全額補助する
- つまり「170円程度に抑える」ことを目標にした、価格連動の変動型
この補助のおかげで店頭は170円前後で踏みとどまっています。ただし——この補助金、いま猛烈な勢いで縮んでいます(※以下の単価は2026年7月初旬時点。週ごとに変わるため最新は資源エネルギー庁の発表でご確認ください)。
| 時期 | 補助の単価(1リットルあたり) |
|---|---|
| ピーク(5月14日) | 42.6円 |
| 前週(6月中旬) | 18.2円 |
| 直近(6月25日〜7月1日) | 約6円 |
5月のピークから6週連続で縮小し、いまやピークの約7分の1。原油価格が少し落ち着いてきたぶん、補助も自動で減っている格好です。
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これからどうなるのか──「出口」の話
論点は、すでに「いつまで補助するか」より「どう補助を終わらせるか」に移っています。
- 高市首相は2026年6月、補助金について「単価を含めて支援の在り方を柔軟に検討する」と発言。縮小・見直しの方向です
- 補助の財源には限りがあり、「1か月強で底をつく」という試算も報じられています(東京新聞・2026年7月初旬時点の報道)
- 補助が細るほど、原油が再び上がれば店頭価格はそのぶん上振れしやすくなります
整理すると、今のガソリン価格は「廃止で下がった力」と「中東で上がる力」と「補助で抑える力」が綱引きしている状態です。そして補助の力は弱まっている。だから当面は「劇的には下がらないが、補助のおかげで暴騰もしにくい」——170円をはさんでの一進一退、と見ておくのが現実的です。
ただし誤解しないでほしいのは、暫定税率の廃止は「損」ではないということ。廃止がなければ、今ごろ価格はもっと高かったはずです。中東の原油高に「打ち消されて」実感がないだけで、廃止そのものは家計を下支えしています。
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家計として、今できること
価格そのものは自分でどうこうできません。だから、できることは「上がる前提で、ムダな上乗せを避ける」方向に絞ります。
- 満タン主義をやめる:価格が一進一退なら、一度に大量給油してもタイミングの得は小さい。それより車重を軽く保つほうが燃費に効きます
- 会員価格・アプリ価格を使う:同じ地域でもスタンドで数円違います。系列の会員割引やガソリン価格の比較で、1円でも安いところを選ぶ
- 「急がない給油」を習慣に:ランプが点いてから慌てて入れると、目の前の高いスタンドに入りがち。残量に余裕をもって、安い店を選べる状態にしておく
- 電気・ガスは“自動の得”を取りこぼさない:燃料費つながりで言うと、この夏は電気・ガス代の政府補助が7〜9月に自動で入ります。ガソリンで取り返しにくいぶん、こちらは確実に受け取る
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まとめ──「実感がない」のには理由がある
ガソリンが思ったより安くならないのは、あなたの気のせいではありません。
①もともと段階的に下げる設計 ②中東情勢の原油高で相殺 ③補助金は縮小中——この3つが重なって、「51年ぶりの廃止」のインパクトが見えにくくなっているだけです。根っこにある〈中東→原油高〉は、食品の値上げと同じ。今年の物価高は、案外ひとつの線でつながっています。
当面は170円前後の一進一退。補助の出口が近づくほど、原油しだいで上振れもあり得ます。焦って満タンにするより、安い店を選べる余裕を持っておく。それくらいの構えが、ちょうどいい夏になりそうです。
状況が動いたら、また続報としてまとめます。
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参考(一次情報)
- 資源エネルギー庁「ガソリンの暫定税率(当分の間税率)の廃止でガソリン代はどうなるの?」
- 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」(燃料油価格激変緩和)
- 補助金単価・全国平均価格の各種報道(2026年6月時点)
※価格・補助単価は記事公開時点(2026年6月)の各調査・報道に基づきます。補助金の単価は週ごとに見直され、今後の原油価格・政府方針で変動します。最新の数値は資源エネルギー庁の公式発表でご確認ください。